●はじめに
弊社は、平成27年度より、広島県中山間地域振興課が実施する「ひろしま『ひと・夢』未来塾(以下、「未来塾」といいます)」の企画・運営業務を担っています。本稿では、弊社が2年間にわたって担当させていただいた未来塾の運営を通して見えてきた課題、成果を整理し、「学びの場づくり」を通じた地域振興のあり方についての可能性を展望するものです。
●未来塾の概要
「未来塾」は、広島県中山間地域振興計画に基づき、広島県の中山間地域が持つ価値へ共感・共鳴する人の輪づくりを行うことを目的に、塾形式の「学びの場」を提供することを通じて、中山間地域が抱える課題の解決を担う「人」づくりを行うことを目指すものです。
「未来塾」は、「はじめの一歩コース」「プロフェッショナルコース」の2コースにより構成され、前者は「地域活動に関する自分なりの一歩を踏み出すこと」を、後者は「既に組織された組織・団体の経営課題解決」を目標として設定しました。
両コースは、全6回のカリキュラムで構成し、座学、現地研修を通じて、各受講生自身による「アクションプラン」の作成と実行を促す内容となっています。
●自分なりのアクションにつなげるカリキュラム
百聞は一見にしかずという言葉があります。これは、たくさんのことを聞くよりも、実際に見ることのほうが何倍の価値があるという意味ですが、その故事は、「百見は一考にしかず、百考は一行にしかず・・」に続くと聞きます。つまり、聞いたり、見たり、考えたりするだけでなく、実際に行動することの重要さを説くものです。私たちは、未来塾の企画に際し、この考えを大切にし、受講による「自分なりのアクション」を促すカリキュラムづくりに留意しました。具体的には、講座実施時における次回までの行動目標の設定と実践状況の振り返り、講座と講座の開催期間中における各受講生への個別のフォローの実施、既に活動を実践する卒塾生との交流機会づくりなどを盛り込みました。
これにより、多くの受講生に対し、座学・現地視察によるインプットのみならず、自分なりのアウトプットを促すことができました。
●受講生の意識レベルをそろえる工夫
第一期「未来塾」の開催に関する反省の一つに、受講生の意識レベル、受講目的が様々で、一体感づくりが必ずしも充分にできかなったことがあげられます。このため、第二期「未来塾」の開催に際しては、各コースの狙い、目標を踏まえ、各コースが対象とする人材像をできるだけ明確にし、カリキュラムの設計、募集活動等を実施しました。この結果、それぞれのコースに見合った受講生を確保することができ、スムースな講座運営が図られました。
未来塾は、個々人のスキルアップと同時に、一定期間、学びの場を共有する受講生同士のつながりを生み出し、新たな活力を得ることも目的とします。多様性を確保するとともに、意識レベルの近い仲間を集めることで、塾終了後に続く人のつながりづくりに効果を得ることができました。
●やる気・本気を育む大人の学びの場の可能性
二年間にわたり事務局として「未来塾」に関わらせていただく中で、同年代の大人が真剣に悩み、自分なりの答えを見出し、自らの殻を越える変化のタイミングに立ち合わせていただきました。それは、受講生自身が自らが選んだ未来へのスタートを切った瞬間であり、感動すら覚えるものでした。
卒塾生の中からは、写真コンテスト、鹿肉を利用した商品開発など卒塾式で発表したプランの実践例が見られます。また、卒塾生同士の交流会が継続され、新たな仲間を巻き込みながら、ネットワークを拡大しています。
●おわりに
「中山間地域の課題解決を担う人材を育成する。」
字面だけ見ると、きわめて硬い内容ですが、そこに込められた想いは、結局、課題解決を担うのは「人」であり、人の可能性を信じ、引き出すことの重要性だと思います。
私たちは、未来塾の運営を通して、①志を同じにする仲間、②良質な学びの機会、③塾生の活動を支える体制が整った「大人の学びの場」は、多くの可能性を引き出し、新たなアクションを生み出すことを体感しました。今後も、様々な分野で「良質な学びの場」づくりを働きかけていくことで地域の可能性を引き出していきたいと考えています。