再エネ

ゼロカーボン実現の極意

 
 

取締役 地域政策部 部長
山田 将巳 
yamada masami

 

ゼロカーボンに向けた取組の現状

国際的な潮流に遅れを取りましたが、2020年10月、菅首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、2021年9月末時点で、464の自治体が2050年ゼロカーボンシティを表明しています。現状として、環境省の補助事業により、国内各地で再エネを最大限に導入する計画策定が進んでおり、2030年までに脱炭素を実現する先行地域に認定されれば、ハード導入支援も約束されます。

 これまで私たちも数多くの計画策定に携わってきましたが、過去の取組を振り返り、評価をするたびに、計画に位置付けられた施策を推進することの難しさを痛感します。

そんな中、欧州や国内の一部の地域では先手を打って取組を進めています。なぜ進められるのでしょうか?計画策定後のアクションに何が違うのでしょうか?

ゼロカーボンシティ実現に必要となる対策のイメージ図

資料)『地方公共団体における長期の脱炭素シナリオ作成方法とその実現方策に係る参考資料Ver.1.0』(環境省)

洋の東西を問わない手法論

弊社の事業領域は広く、メインフィールドは中国地方で、数多くの中山間地域をめぐり地域振興に向けた伴走支援を行っています。そして時には、海外展開支援事業でインドへと、東奔西走しています。

地方創生を謳い、活性化に取り組むのはどこも同じですが、活動が進む地域には共通した特徴があります。それは「徹底的なコミュニケーション」です。私たちは、コミュニケーションが活発な地域ほど、取組の推進度が高い、という経験則を持っています。

弊社では、地域で行うワークショップの本質を学ぶために外部講師を招き社内研修を行っていますが、そんな中でも学びがあります。「コミュニケーションを増やせば関係性が良くなり、関係性が良くなると売上が伸びる。」これは事業者向けの言葉ですが、地域に当てはめれば「売上が伸びる」の部分は「取組が進む」と置き換えることができます。

実際に矢継ぎ早にアクションを起こし、継続している中山間地域で地元の方たちに話を聞くと、例えば、公民館エリアで取組を進めたい場合、そのエリア内の自治会を練り歩き、丁寧に説明されるそうです。この丁寧さが「自分ごと化」する人を増やし、活動をドライブさせます。また、会議を繰り返し、時間をかけて次のビジョンをつくりあげる、といった良好な循環を生み出します。

オーストリアの小さな村でも、ゼロカーボンに向けた取組は、「省エネ」「再エネ導入」「オフセット」(図1)と、日本と何ら変わらないことばかりですが、それらを実行に移す覚悟を村内で共有し、公的組織や中間支援組織ともやはり徹底的に議論を重ね、アクションを起こし継続しています。

ダイジに据えるもの

トップダウンを悪者扱いするつもりはありませんが、自分たちで考え、侃々諤々と議論を戦わせたアイデアには愛着も沸き、そう簡単に諦めることもなくなります。JICA・ODA事業でも、日本の優れた設備を導入したものの、インドの人たちが使いこなせず、放置されるケースが散見されます。このため、現地の人たちが機器を使いこなせるよう、現地の人たちと何度も意見交換を交わし、自分たちのモノにしてもらう工夫が求められています。

 設備導入は、いくらでもスピード感を持って進められます。しかし、それらを使いこなしてこその「ゼロカーボンの実現」。課内、庁内、連携自治体と、地域住民、事業者とコミュニケーション。ここに時間をかけることが「ゼロカーボン実現の極意」だと考えています。